扉を開けた瞬間、その喫茶店の評価は済む。コーヒーと煙の混ざり合った匂いを嗅いだだけで、分かる。この一瞬のためにここに通っている。
いつもの、を飲みながら先の雀荘を思い出す。
久しぶりに扉を開けた瞬間、いい雀荘だな、と思った。雀荘も喫茶店と同じで、入ったときの煙と熱の匂い、さらにいうならそれらが染み込んだ壁を見るだけで品位が分かる。ここは社会的品位が限りなく低そうで、つまり、私にとっては、品位が限りなく高そうな雀荘だった。
卓につき、匂いの主な原因であろう大男と麻雀を打った。
日ごろの行いがいいのか、先日ホームレスに発泡酒をくれてやったおかげか、手が軽かった。
二巡目にしてチートイツテンパイ。待ち牌は絶好の一枚切れオタ風、南。
だがここで、ツいてる、と曲げないのが俺流だ。
期待値、だとか、鉄リー、なんて言葉に頼る人間にこそ効く。最近は素人さんでも引きが上手く、硬い。しかもそれは養われた肌感覚ではなく頭で覚えた期待値というのだから感心する。残り2枚の南、固められないためにはどうすればいいか。
七巡目、対面の大男と上家がイーシャンテン気配。
ここだ。
ここで、ツモ切りリーチ。
残り枚数が少ないペンカンチャンや単騎待ちを看破されるのは珍しくない。しかし相手がイーシャンテンなら話は違う。イーシャンテンには二種類ある。
一つはこの大男のように受け入れを重視してぶくぶくに構える形。にやりと笑い大男も追いかけリーチ。待ちは宣言牌の近くだろうか。
もう一つ、上家さんのように安牌をかかえ、スリムに構える形。頭のいい、スマートな打ち手。
だが、悪いがもう引きずり込んだあとなんだ。そいつが、ロンだ。
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