2013年5月3日金曜日

CUT COPY



―対面のCut Copy(以下CC)のリーチ。早い巡目の親リーだ。捨て牌を見ると3mを切った後の宣言牌4m。25mが本線。無難に降りるべき。浮き牌はドラの“白”とオタ牌の“西”。迷わずに西を選ぶ。
CC         「ロン」
―西単騎のチートイツ一発ドラドラ。
CC         「親のリーチに対してシャンテン押しする可能性15%」
「タンピン系で手を進めるときオタ牌を残す可能性82%」
「リーチ後浮いたオタ牌を打つ可能性90%」
「現状最も“ラモン”に有効な待ちは“西”」
「有効な待ちは“西”」
「有効な攻撃認定」
「データを追加します」
ラモン    「この西を狙いに来るのか。噂どおりのイカレたコンピューターじゃないか。だが常に進化するラモン様の麻雀を捕らえられるかな?」
―その後、また余剰牌を狙われてのチートイツ一発放銃。
CC         「ロン」
ラモン    「む」
―次巡リーのみに刺さり、飛んだ。
CC         「ロン」
              「ミッションコンプリートミッションコンプリート」
―そして俺のネット麻雀AAAクラスのアカウント“ラモン”を奪われた。

ネットの噂          
IDを奪うウイルス?」
「そう。運営も手を焼いてるって。上位ランカーの半分はやられたんだ。」
「トップランカーのラモンも消えちまったんだろ。」
「ウイルスがアカウントを消しちゃうの?」
「麻雀で負けたアカウントを、な。」
「コンピューターに上位ランカーが簡単に負けるもんか。」
「それがそのコンピューター、相手の情報を読み取ってそいつに合わせた最適行動をしてくるんだと。」
「個人戦特化のデータ麻雀。サシ馬相手との戦績は無敗。」
「その名もCut Copy。」
「へえ、面白そう。じゃあ俺がその記録を止めてやるよ。」
「引っ込みな雑魚。」
「残念ながらCC500戦以上打ったAクラス以上のアカウントとしか打たないんだと。」


ダニー    「全くはた迷惑なウイルスだよ。おれのラモン垢も潰されちまったし。結構時間かけてるんだぜ?」
           「で、かの有名な元ラモンさんがBクラスのぼくに何の用ですか?」
ダニー    「デコピエロくん、あんたが凄腕のハッカーだって聞いたんだけど。」
ピエロ    「噂でしょう?ただの引きこもりですよ。」
ダニー    「あんたならあのウィルス止める方法知ってるんじゃないかって。」
ピエロ    「話聞かない人ですね。でも知ってますよ。噂ですけど。」
ダニー    「さすがはネットに張り付いた生活を送ってるだけあるね。聞かせてよ。」
ピエロ    「・・・一度でも負ければ止まる設定をしてるみたいですよ。あくまで噂ですけどね。Aクラスの皆さんがしっかりしないとネット麻雀最強の座をコンピューターウィルスに取られちゃいますよ?」
ダニー    「へえ。そいつは分かりやすくていいな。それともう一つお願いがあるんだけど。サーバーに潜り込んで、おれのデータを書き換えてくれないかな?」
ピエロ 「無理ですよ、アカウントの情報を書き換えるなんて。第一ただ潜り込むのにだって何日かかるか。麻雀のし過ぎでついに脳みそ解けました?」
ダニー    「時間はある。俺が500戦打たなきゃいけねえ。」
ピエロ    「・・・?」「AAAクラスのアカウントを上書きするんじゃないんですか?それなら実力あるんだから、新しいアカウントで勝負したらいいじゃないですか。」
ダニー    「あんたに書き換えてもらいたいのは、俺の情報。勝率はどうでもいい。リーチ率。フーロ率。放銃率。アガリ率。シャンテン押し。全てだ。CCと打つ資格を取ったあとの新しいアカウント“ダニー”のデータを、消されたラモンの戦績にしてくれないか?記録は残してある。」
ピエロ    「それになんの意味が?」
ダニー 「一度躓いたからには同じところから歩き出したいのさ。」
ピエロ    「めんどくさい性格ですね。」
ダニー 「よろしく頼むぜ、天才ハッカー。」
―数日後
ダニー 「出来たかい?こっちはとっくに準備完了だぜ。」
ピエロ 「いつでも書き換えられますよ。なんなら名前も。段位も。AAAクラスに戻しますか?」
ダニー    「いや、そいつはいい。別に肩書きはどうでもいいから。」
ピエロ 「そうですか。…1つ、潜り込んで分かったことがあるんですけど。あのウイルスIPアドレス付ですよ。」
ダニー    「ん?どういうことだい?」
ピエロ    「プログラムじゃないってことです。あいつはウイルスなんかじゃない。ただの人間です。裏でプレイヤーが操ってます。」
ダニー 「あぁ、そういうことか。」
ピエロ 「驚かないんですか?データを見られてるとは言え、いまだ無敗中なんでしょ?」
ダニー 「AAAクラスになるまで打ってると相手の呼吸くらい聞こえる。嘘じゃないぜ。なんとなく分かってたよ。だからこそ、負けたくないんだ。」
ピエロ 「そうですか。まぁ、ご検討を。」
ダニー    「久しぶり。」
CC         「アカウント カケル サシウマ ニギル ?」
ダニー 「あぁ。またしびれさせてくれよ。」

CCの早いリーチに対し、一発でドラを切るダニー。
ダニー    「今度こそ潜り抜けさせてもらうぜ。」
―その後、テンパイを入れなおし、リーチ。CCの放銃。そこからダニーの猛攻が始まる。
ダニー    「負ける気がしねえ。こういうのを人間さまは流れがきてるっていうんだぜ?」
―得意の早上がり。先制リーチで場を流していく。オーラス。CCとの差は12000点、ハネツモ、マン直で捲くられる。CCのリーチがかかる。手には安牌らしき1sが三枚。ドラの8mが2枚。1sに手をかけようとしたとき、脳裏に東一局、また以前飛ばされた時の情景が浮かんだ。
ダニー    「この選択をするために、俺は戻ってきたんだ。フォームを守るのか。セオリーを守るのか。悩んだとき、最後に何を信じる。おれは感性を信じたい。フォームは崩れていい。崩れたらまた積み上げればいいんだ。目の前の勝負に潜り込め。感覚で選ぶのは、当然。」

ピエロ 「惜しかったですね。」
ダニー 「見てたのか?いい勝負だったろう?」
ピエロ 「最後のドラ押しは意地ですか?」
ダニー 「ん…いや最善手だろうと思う。読みきられちまったね。」
ピエロ 「痺れました。またやりましょう。」
ダニー 「・・・え?」
ピエロ 「I’m Cot Copy.

―画面では未だCCが「ミッションコンプリート」と声高に叫んでいた。

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