2013年5月6日月曜日

能ある鷹


(第一打は麻雀の神様、鳳凰さまから。)
 雀荘に通う青年イチはそう思いながら第一打を放つ。だがこの局は積極的に前に出ない。配牌が悪いときにじっくりと構え育てるような男ではなかった。イチは早々にこの局を捨て、上家の親に鳴かれないようにじっと身を潜める。対面の店長が軽上がりをしてくれたので上出来だ。
 次巡、店長の親で赤2枚の好配牌。
(好配牌は攻配牌ってね)と手を進める。
第一打は2sから。普通なら食いタン赤2に育てそうなものをイチはそうは打たない。はじめから1sと何かのシャボに構える。
「リーチ」
 イーソーと8mのシャボ第一打の2sがミソだ。店長が一発で振込み、このマンガンを守りトップを手に入れた。
 イチはその日もしっかり小遣いを握って帰り、繁華街に消えていった。
「店長イチさんと相性悪いですね」店員が店長にそう言う。「うまいですよね、どっしりと構えて能ある鷹は爪を隠すっていうんですかね」という言葉に店長は「そうだよねえ」とのんびり返していた。

 繁華街。イチは今日もキャバクラZEROに入り浸っていた。麻雀で稼いだ金はすべてここに消えていた。
「あかねちゃん今度絶対デートしようよ!」
「そうねえ、新作のバック買ってくれたら考えようかな」
「おうおう、まかしちょきなあ、約束だぜえ」とイチは上機嫌だ。

 キャバクラの店員が店長に耳打ちをする。
「店長、あかねちゃんの客、あんな身なりなのになかなかパンクしませんね。どこかのボンボンなんでしょうか」
「ふっ、麻雀打ちだよ」
「麻雀打ち?それであの豪遊ってことは相当の腕なんですかね」
「さあなあ」とそういうと店長は電話がかかってきたのか外に出た。

 外に出ると大きな黒い車からやくざの親分が降りてきた。
「おい、用意はできているか」と一言声をかけると店長はキャリーバックに入った大金を渡した。「今夜は大事な一戦よ」というと車に入ると、隣に座る代打ちにへこへこしてやがる。とても強そうには見えねえたたずまいなんだが当分この代打ちを雇っている。

 なんでも昼間は麻雀屋の店長をしてるのだとか。

 だがまあ負ければ代打ちが飛ぶだけよ。ついでに組も飛ばしてくれりゃ俺も少しはましな地位に昇れるんだが、おっと、こいつは秘密だ。能ある鷹は爪を隠すってな。

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