2013年7月9日火曜日

マンガンガンマン

 卓上に風が舞っていた。乾いた空気が西へ吹きぬける。砂が舞い、全員が軽く目を瞑る。
 にやにやと笑った男が牌を横に曲げる。
「いいのかい。それは宣戦布告の合図だぜ?」カウボウイハットがタバコに火をつける。リーチは相変わらず、にやけ面を隠さない。
 ドラをバーボンが強打した。
ハットがそれをポン。
リーチはにやにやとしながら、ツモを卓に置いた。
「マンガンだ、出直してきな」リーチの頭をハットのマンガンが貫いた。
もぐりが返り血をハンカチでぬぐいながら口を開く。
「あんたが噂のガンマンかい」
「噂のガンマンなんてこの町じゃあ腐るほどいるぜ」
「マンガン一発で相手を沈めるって噂の変わり者のことだよ」
「さあ、どうだろう」

もぐりが染め手を順調に育て、ツモ上がりした。
(マンガン一発なんて噂、どうかと思うぜ。だったら突き抜けちまえばオレの勝ちだろう)
「あんた、もぐりだろう」バーボンが口を手の甲で拭いた。「そんな浅い奴はよそもんって決まってやがるんだ」
 もぐりは黙って安全牌を溜め込んだ。このまま軽流しと降り打ちでこいつらの首は戴きさ。

 マッチが卓を舐め、それを追うように火の手が走る。
タバコに火がつき、ハットのリーチがかかる。
(ここだ、噂なら一発限りの直撃狙い。オレの手には安全牌が山ほどあるぜ?)
 ハットはあがれない。
 そのまま第一ツモを引き寄せる。

「カン」
バーボンがその隣で“パン”と言った。

「ツモ。リーヅモリンシャンドラドラのマンガンは、おっと裏込みで倍マン。逆転かな」
 もぐりの頭を何かが貫いた。
「二丁拳銃のガンマンだって聞いてなかったのかい」

 ハットは手で作ったピストルをふっと息で吹き消した。


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